静かな街で行われる、いつもと違った秩父夜祭

毎年12月2日、3日はユネスコ無形文化遺産に登録されている「秩父夜祭」が開催される日。しかしながら、今年はコロナウイルスの影響で屋台・笠鉾の曳き回しなど、付け祭りが自粛となってしまいました。

そんな中、秩父夜祭の本来の神事については執り行われるとのことで、その様子を取材しました。

秩父地域の一年の総決算となる秩父夜祭。今年はいつもと違った空気の中で、どんな祭りが行われたのでしょうか。

静かな街の中で行われる例祭

例年通り、12月3日の朝から秩父神社では神事が執り行われていきます。いつもと違うのが、朝一番から秩父の街中を曳き回される屋台・笠鉾の姿がなく、屋台囃子も鳴り響いていないことです。そんな静かな朝を迎えた神社で、例祭が行われていきます。

夜の御神幸祭(ごしんこうさい)に向けて、御神馬(ごしんめ)も準備万端です。

境内の神楽殿では、朝から神楽が奉納され、雅楽が神社内に響いていました。

午前10時半を過ぎた頃、社務所の外に神職が揃い、例祭(御本殿の儀)が始まります。
社務所・平成殿の前が一気に厳かな空気に包まれます。

宮司をはじめ、神職が本殿へ向かいます。

本殿の中で、静かに神事が始まりました。静寂の中に雅楽の音が鳴り響き、境内が厳粛な空気に包まれていきます。
宮司の祝詞にも、現在の新型コロナウイルスの状況などが盛り込まれており、神様への祈りとして、この事態の収束を願う様子が伝わってきました。

一通り神事が執り行われたあとは、本殿前の舞台にて「ははその舞」が奉納されます。寒椿を手にした4人の巫女が、凛とした姿で静かにそして優雅に踊る姿がとても印象的でした。

ははその舞をもって、午前の例大祭御本殿の儀は終了。このあとは夕方に御神幸祭が行われます。

いつもと違うルートの御神幸祭(ごしんこうさい)

夕方17時30分頃からは、いよいよ秩父神社を出発して御旅所(おたびしょ)に向かう御神幸祭が行われます。本来は屋台・笠鉾とともに数時間以上かけて御旅所に向かうのですが、今年は神社の行列のみで行われます。

まずは本殿で神事を行います。

神事が終わったら、神社行列が出発。行列には御神体をの唐櫃(からびつ)や、御神馬、大真榊(おおまさかき)等などが列を連ねます。

御旅所に向かう往路は、例年は表通りを進みますが、今年は屋台・笠鉾がいないため、表参道の番場通りを通行します(元々はこちらのコースの方が正規のルートだそう)。

急坂の団子坂手前では、電車の踏切を待つシーンも。通常、ここを神社行列や屋台・笠鉾が通る際は、列車が運行されないようになっているので、電車を待つ神社行列は貴重な瞬間です。

行列一行は、団子坂を登って御旅所の斎場へ次々と向かっていきます。

御神馬は坂を駆け上がって登場です。

一行が御旅所に到着し、御旅所斎場祭が執り行われました。例年は各町の屋台・笠鉾が団子坂を全て上がりきってから行われるので、24時近くからスタートするのですが、今年は早い時間から行われました。

提灯とかがり火の明かりで、御旅所は幻想的な空気を醸し出しています。

最後に静かな舞を奉納し、御旅所斎場祭が終了します。

毎年御旅所に集まるときに常に羊山公園から上がる花火ですが、今年は神事の後に約40分ほど打ち上げられることに。

尺玉やスターマインが次々に打ち上げられ、静かな秩父夜祭の夜空を彩りました。

最後に今年の秩父夜祭について、秩父神社の薗田権宮司にお話を伺いました。

「今年はまさに未曾有の有事となった年でした。今、私たちは、日本人が古来から継承している文化をどうつないでいくか、直面していると思います。
古来より人は理解できないものに対しては神へ祈りを捧げてきました。今の情勢も、未知のウイルスに対しても同じで、流行病を払拭するために私たちが粛々と様々なお祈りを捧げています。

このような年ということもあるので、流行病を避ける茅の輪くぐりを行ったり、厄除の赤い神札を配布したり、御参拝いただく皆さんに人数の制限をお願いしたりと、いろいろなことを行ってまいりました。

しかしながら、人は何も知らずに怖がっているだけでは前に進めません。交通事故や病気があるように、いつでも怖いものとは隣り合わせです。感染予防をしっかり行いながら、できることを行動していけば良いかと思います。
また、こういう状況下だからこそできることもぜひやってみてください。普段会えない人に想いを馳せる、今度会えたときにはこんなことを話そうなど。今という時を前向きに捉えて過ごすのが良いかと思います。」

そうお話しされていました。

例年のような賑わいのない秩父夜祭。そんな中でも、長年行われてきた厳粛な神事は、いつもと変わらず、より一層想いを込めて行われていたように感じました。祭り本来の意味合いが込められた神事を改めて目の当たりにすることで、普段の生活やコロナ禍における過ごし方を考えさせられた気がします。
そして来年はまた、秩父の街中に屋台囃子が鳴り響き、豪華な屋台・笠鉾が曳き回される秩父夜祭に出かけられるよう、新しい生活様式を実践していきましょう!