出雲伊波比神社の流鏑馬まつりレポート

疾走する馬から少年が矢を射る!「出雲伊波比神社の流鏑馬まつり」

毛呂山町の「出雲伊波比(いずもいわい)神社」で、春と秋に2回開催される「流鏑馬」。秋の「流鏑馬」では15歳前後の少年が馬に乗り、馬場(ばば)※1でさまざまな馬上芸を披露します。「さいたまつり」では、11月2日の祭馬巡行と、11月3日の秋の「流鏑馬」本祭(夕的)に密着。迫力ある祭りの様子をレポートします!

 

【前日】3つの祭礼地区を約5時間半かけてめぐる祭馬巡行は、「乗り子」や馬を間近で見られるチャンス! 毛呂山町の美しい自然も見どころ!

「流鏑馬」本祭の前日に当たる11月2日は、馬に乗った「乗り子」※2が毛呂山町の3つの祭礼地区を練り歩きながら、「重殿(じゅうどの)行き」、「焼米饗応(やきごめきょうおう)」、「ミタラセ池での口すすぎ」などの祭事を行います。(もちろん、一般の方の見学もOKです!)

13時半ごろに本陣として使われている的宿(まとやど)※3を出発し、戻ってくるのは夕方19時ごろ。約5時間半の一大イベントとなります。

 

「流鏑馬」の本陣となる的屋(まとやど)には、毛呂本郷集会所が使われます。

 

早朝、「出雲伊波比神社」の参道に、神様が訪れたことを表す大きな幟旗(のぼりばた)が立てられます。

 

巡行前、「乗り子」と彼らをサポートする「矢取り」※4という年配者が、的宿から走って毛呂川に向かい禊(みそぎ)を行います。川に到着すると一礼して、祭りの成功を祈願します。

 

その頃、的宿では「乗り子」が乗る馬の支度が始まります。

 

禊から戻り、陣笠、陣羽織をまとった3地区の「乗り子」がそろいました。いよいよ、祭馬巡行(さいばじゅんこう)がスタート!

 

一の馬である第一祭礼区(2017年は毛呂本郷地区)の馬を先頭に、二の馬、三の馬と続きます。

「乗り子」のサポートや馬の世話をしているのが「口取り」※5と呼ばれる若者たち。「ホイホイ!」という威勢のよい掛け声をかけながら、「乗り子」が乗った馬を先導します。

 

的宿を出発した一行が、最初に向かう場所が「重殿淵(じゅうどのぶち)」。これを「重殿(じゅうどの)行き」といいます。その昔、出雲伊波比神社のふもとにある「ミタラセ池」に落とした“ひしゃく”が流れ着いたといわれる神聖な場所です。

 

「重殿淵」では、「矢取り」から受け取った“ひしゃく”の水で、「口取り」が馬の口をすすぎます。

例年雨に降られることも多いという、この「重殿行き」。この年は穏やかな晴天に恵まれました。

 

祭馬巡行中に見られる美しい景色や昔ながらの家屋も、みどころです。

 

次に訪れたのが「重殿淵」がある、前久保地区(三の馬の祭礼区)の「前久保集会所」。ここで「乗り子」たちは、「焼米饗応(やきごめきょうおう)」という伝統的な接待を受けます。温かく迎え入れられる「乗り子」たち。緊張がほぐれたのか、笑顔を見せるひと幕も見られました。

 

焼米とは、蒸した米に大豆などを混ぜて合わせたもの。合戦時の非常食だったといわれています。朝5時から前久保地区で作られた焼米は、その場にいた見物客にも“縁起もの”として、ふるまわれました。お米や豆の風味がしっかり感じられる、深い味わいでした!

続いて「ミタラセ池」で馬の口をすすぎ、最後の目的地である「出雲伊波比神社」へ向かいます。

 

出雲伊波比神社では、「神職家饗応(きょうおう)」と呼ばれる神職家による接待が行われます。饗応※6が終わると、「乗り子」たちは的宿へ戻ります。深夜の的宿では、本祭で撒かれる“餅”をつく「追出の餅つき」などの行事を行い、本祭に備えます。

 

前日の祭馬巡行は、本祭に比べ長い時間、しかも間近で「乗り子」や馬を見ることができます。沿道では子どもから年配の方まで多くの観客が声援を送っており、「乗り子」たちもその声援に応えるべく、ところどころ足を止めて一緒に記念撮影をしたり、馬をさわらせたりしていました。一日密着してみて、地元の方への感謝の気持ちが強くあふれた祭りだなと、感じました。

さて!続きまして、いよいよ本祭のレポートです!

【本祭】いよいよ「流鏑馬」本番! 「乗り子」たちが見せる美しい馬上芸の数々に、場内も拍手喝采!

11月3日は「流鏑馬」本祭です。この日は午前中に「朝的(あさまとう)」、午後に「夕的(ゆうまとう)」が開催されます。218mの馬場を舞台に、馬にまたがった「乗り子」たちが颯爽と観客の前を駆け抜けたり、さまざまな馬上芸を見せたりする姿は一見の価値ありです!

 

「流鏑馬」の会場となる「出雲伊波比神社」。本殿は、国の重要文化財に指定されています。

 

神社西側に設置された馬場。ここで「朝的」、「夕的」が行われます。

 

午前9時、「朝的」が始まります。まずは「口取り」が、馬場を走り抜けます。各祭礼区で異なる衣装も見どころです。

 

続いて「乗り子」が、ゆっくりと馬場を往復してお披露目する「陣道(じんみち)」が行われます。「乗り子」が登場すると、見物客から「おー!」と歓声があがります。

 

背中には、祭礼区の一、二、三の文字が入っています。「陣道」が終わると「乗り子」は陣笠と陣羽織を脱いで、的を射る準備に入ります。

 

「朝的」は板ではなく、藁の的が使われます。

 

そして、一の馬から順に矢を放つ「矢的(やまとう)」が1回行われます。

 

「矢的」が終わると、走る馬にまたがったまま両手で“ムチ”を高く掲げる「ムチ」という馬上芸が披露されます。

 

「朝的」が終わると、馬場に板の的を奉納する「的更(まとか)えの儀」が行われます。

 

同時に境内では、合戦時の陣を再現したといわれる「野陣(のじん)の儀」が始まります。ここで「乗り子」と「矢取り」は、神官から御神酒や柿の饗応を受けます。

 

まるで戦国時代にタイムスリップしたかのような「野陣の儀」。シャッターチャンスです!

 

「野陣の儀」が終わると、「乗り子」たちは、的屋に戻ります。的宿では、「夕的」に備え「乗り子」の衣装替えや、馬の準備などで大忙しです。

 

色鮮やかな「夕的」の正装に着替えた「乗り子」たち。こちらもぜひカメラで抑えたいところ。左から一、二、三と並んでいて、白が源氏、紫が藤原氏、赤が平氏を表しているとも言われています。花笠をかぶり、背中に母衣(ほろ)※7を背負います。

 

時刻は14時少し前、「夕的」に向けて「いざ、出陣」です!

 

本祭のお楽しみの1つ「出陣の餅投げ」。本陣のすぐ前の屋敷から、出陣を祝して餅がふるまわれます。

 

出雲伊波比神社に到着すると、まずは、「夕的」の陣道(じんみち)が行われます。

 

「朝的」とは打って変わって、美しい衣装をまとった「乗り子」に会場からも歓喜の声が!

 

ここから「夕的」がスタートです! まずは、リーダーである一の馬のみが一の的に矢を放つ「願的(がんまとう)」、続いて一の馬から順に3つの的を射る「矢的(やまとう)」が3回ずつ行われます。

 

勢いよく走る馬に乗ったまま、的めがけて矢を放ちます!観客も、「がんばれ‼」と大声援を送ります。

 

 

「乗り子」が息を整え、「口取り」のサポートのもと馬場に出ます。勢いのあるこの瞬間も迫力満点で、気分が高揚します!

 

見事に的に矢を命中させると、場内が大きな拍手に包まれます!

 

馬場を走り抜けると、待っている「口取り」に先導され、神社内から馬場の先頭へゆっくりと戻っていきます。「乗り子」と「口取り」が馬の状態を確認しあいながら、次の芸に備えます。

 

馬場に戻ってくるまでの少しの時間、場内は一瞬の静けさに包まれます。「乗り子」の登場を今か今かと待ちながら、ちょっとした緊張感も味わえます。

 

「矢的」に続き、“扇子”や“ノロシ”、“ムチ”を使った芸や、“ミカン”や“餅”を投げる芸など、「夕的」ならではのさまざまな馬上芸で見物客を楽しませてくれます。

口に扇子をくわえながら、両手に持った2本をパッと開く「扇子」

 

両手に持った色紙をなびかせながら馬を走らせる「ノロシ」

 

「朝的」に続き、「夕的」でも「ムチ」が行われます。

 

実は「矢的」が終わると、馬場の的側にも入ることができるんです。見物客が多く、遠くから見ていた人も間近で見るチャンス。馬が駆け抜ける時の風を感じることができます。

続いて衣装の胸部にしまわれた「ミカン」と「餅」投げ。毎年大人気です。

 

“餅”には当たりくじがついています。「乗り子」が去った後、我こそはと“餅”が散らばった馬場めがけて、争奪戦が繰り広げられます。(※この馬上芸の後のみ、馬場へ入ることが許可されています。)

 

この「夕的」をもって「流鏑馬」は終了となります。「乗り子」たちは、鳴りやまない拍手の中、馬場を後にし、的屋に戻っていきます。

 

15歳前後の「乗り子」による美しい馬上芸が楽しめる秋の「流鏑馬」。一度訪れてみたら、きっとその雄姿のとりこになってしまうことでしょう。もちろん、前日の祭馬巡行を見に行くもよし、本祭の「流鏑馬」を応援するもよし、楽しみ方はいろいろ。約950年続く、毛呂山町の伝統的なこのお祭りを、ぜひその目におさめてみませんか。

取材:2017年11月2日~3日

※1:馬場=馬を走らせながら「乗り子」が「流鏑馬」などを披露する218mの走行路。

※2:乗り子=「流鏑馬」の射手のこと。

※3:的宿=秋の「流鏑馬」にて中心となる宿。

※4:矢取り=祭りの前日から「乗り子」を世話するために付添う年配者。

※5:口取り=主に馬を扱う若者たち。「乗り子」とともに「流鏑馬」までの準備期間を過ごし、「乗り子」が最後まで無事に流鏑馬が務められるよう行事を支えている。

※6:饗応(きょうおう)=酒や食事などを出してもてなすこと。

※7:母衣(ほろ)=背後から飛んで来る敵の矢を防ぐためのものといわれている。

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