憧れのコノハナサクヤ姫役に挑戦!それを支える実行委員長の努力とは?

さきたま火祭り実行委員会 実行委員長 山口 裕久さん / コノハナサクヤ姫役 高橋 佑香さん
日本最大の円墳を含む「さきたま古墳公園」で行われる「さきたま火祭り」。
今年で33回目を迎えますが、その裏側には地元の人の協力を得たり、各所の調整をしたり…たった1日の祭りのために実行委員の方の努力があります。
また、祭りの花形でもあるコノハナサクヤ姫役も毎年立候補者が出るほどの人気役。今年コノハナサクヤ姫役に抜擢・挑戦する高橋さんと、実行委員長の山口さんに、祭りの舞台裏、そして祭りへの期待を伺いました!
文:浅見 裕
人気のコノハナサクヤ姫役への期待
浅見 山口さんが「さきたま火祭り」に関わり始めたのはいつころからでしょうか?
山口さん 2005年の20回目の時からですね。祭り自体には、中学生の時から遊びに行っていましたが、委員会に携わり始めて今年は13年目となります。
浅見 どのような経緯で委員会に?
山口さん いやあ、周りの推奨で(笑)。でもやっていくうちに“やりがい”を感じるようになりまして。今年と来年は実行委員長という大役を任されています。
浅見 “やりがい”はどんなところに感じられるのでしょうか?
山口さん たった一日のために半年も前から準備をするんです。地元も人の協力をいただいたり、関係各所にあらゆる手配をしたり。とにかく、調整が大変なんです(笑)。
でも全てが終わった時の達成感があって。達成感を感じるたびに“やりがい”がある仕事だなって思います。
浅見 なるほど。山口さんが実行委員として翻弄している時に、高橋さんも祭りに参加者だったわけですね(笑)?
高橋さん そうですね!今回コノハナサクヤ姫の役をやらせてもらいますが元々は「採火行列※1」に加わったことが最初の接点です。「さきたま火祭り」にはよく遊びに行っていましたが、祭りに関わるという意味だと、その接点が初めてです。

採火行列のために火起こし
浅見 祭りに参加したり遊びに行ったり、「さきたま火祭り」にはどんな印象がありましたか?
高橋さん そうですね。あまり大きな火を見ることがないので、その迫力にびっくりしました!本当に熱いんだって(笑)
山口さん ナイロン製のスタッフジャンパーが熱で溶けたり、髪の毛が焦げたりしたこともあるくらいですからね(笑)
浅見 そんなに熱いんですか!すごいですね…。高橋さんはそんな祭りを身近で見て、今回コノハナサクヤ姫に抜擢されてわけですが、どのような気持ちですか?
高橋さん 以前に、私の姉の友人がこの役をやっていたのを見ていて、とても綺麗だな、と憧れを持っていたので、とても嬉しかったです!
浅見 周りの反応はどんな感じでしたか?
高橋さん 「すごいね!」「見にいくよ!」って友達たちの間でちょっとした話題になりました(笑)
浅見 なるほど、期待されているんですね!ちなみに、コノハナサクヤ姫はどのようにして選ばれているんですか?
山口さん 毎年当番の地区から高校生から20歳くらいまでの若い方を選出してもらってます。基本的には立候補制で。抽選になるときもあるんです。
浅見 人気の大役なんですね!

コノハナサクヤ姫は輦台(れんだい)に乗って登場する花形
たった一日のために半年間の準備を
浅見 祭りの準備はいつくらいから行っているのでしょうか?
山口さん だいたい10月ころから始めるので、約半年前から準備をしています。
浅見 準備の中で特に大変なことはなんでしょうか?
山口さん 関係各所の調整が大変ですね(笑)。「さきたま火祭り」は地元の住人や企業・自治体などの力を借りて成り立っているので。その協力をいただくのに色々と足を運んだりしています。
浅見 それは大変ですね…
山口さん そうですね。でも当日、お客さんに楽しんでもらうための準備なので、しっかりとやっていきます。たいまつ作り一つ取っても結構細かいこだわりがあるんですよ。
浅見 どんなこだわりでしょうか?
山口さん 当日は火のついたたいまつを持って長時間歩いてもらいます。なので、火玉が落ちず、しっかりと燃え続けるようにしないといけないんです。
浅見 なるほど。
山口さん そのために、まず布は綿でないといけません。ただ、この綿も身の回りには意外となくて…わざわざ反物を買って、たいまつに使っています。その綿を竹にきつく縛り付けるんです。そうして作ったたいまつは前日から灯油につけ、しっかりと染み込ませます。そうすることで、長く火が灯るたいまつが出来上がります。
浅見 ものすごい手間がかかっているんですね…

布をきつく巻きつけて作るたいまつ
高橋さん 普通に見ているだけでは全然気づかなかったです!準備も大変なんですね…
山口さん そうですね。ちなみに炎上させる産屋※2は地元の年配の方が力を合わせて、数日前から作ります。今年は、地元の「ものづくり大学」とも連携連携して進める予定です。
たいまつの炎が龍のように見える「御神火下り」は必見!
浅見 当日の見どころを教えていただけますでしょうか?
山口さん たいまつを持った人の行列はまるで龍のよう、評されています。特に稲荷山古墳の頂から、松明を掲げて行列が下りてくる様子は幻想的です。ぜひ古(いにしえ)の世界への旅を楽しんで欲しいです。

たいまつを持った人たちが古墳から降りてくる「御神火下り」
浅見 それは期待できますね!
山口さん はい。あとは最後の花火もちょっと他では味わえないものですよ。
浅見 と、言いますと?
山口さん 「さきたま火祭り」であげる花火は、高度が低いんです。これは、周りに住宅があることで、高さのある花火が上げられない事情からなんですが、逆にこれが新鮮です。お客さんのすぐ頭の上で花ひらく花火は迫力満点です!
高橋さん 私も小さい頃から花火は楽しみにしていました!友達とよく見に行ってました。
山口さん このような祭りが歴史的な古墳で行われれるので、なかなか他では見られないものばかりです。
浅見 なるほど!とても楽しみです!最後に、集まったお客さんがより楽しめるよう、山口さんから高橋さんにアドバイスを一言お願いします。
山口さん そうですね、とにかくリラックスしてやってもらえればいいと思います。あとは仏様のようににっこりと(笑)。
高橋さん 笑うのは得意なんで頑張ります!
浅見 お二人ともありがとうございました!
コノハナサクヤ姫役は一度しか経験できない貴重な体験。大役への憧れと、それを支える実行委員長の努力が合わさって、当日の祭りが成功していくのではと思います。今年の「さきたま火祭り」もぜひ現地で楽しんで見てください!
《注釈》
1、採火(さいか)行列:長老がおこした火を陶器に入れ、歩く行列
2、産屋:祭りで炎上させる小屋。「さきたま火祭り」のベースになった古事記の神話に基づく演出