長瀞船玉まつりインタビュー

“1日だけの船大工” 万灯船に込められた想いとは

写真左(兄) 並木 隆明さん、写真右(弟)並木 宏道さん

長瀞船玉まつりといえば、幻想的な万灯船と豪華な花火の競演が見られる祭り。国指定名勝・天然記念物「長瀞」の岩畳で開催されるこの祭りには、毎年多くの観客が訪れます。

400個以上の提灯をつけた万灯船は観客注目の的。実は、この万灯船を組み立てているのは「1日だけの船大工」の兄弟でした。

今回は、祭り当日に万灯船を組み立てる並木兄弟にお話を伺いました。

万灯船の組み立てには、誇りがある

-お二人が中心となって万灯船を組み立てているそうですが、どのような経緯で携わることになったのですか?

隆明さん(兄):もともと、僕たちのおじいちゃんが船大工をやっていて、長瀞船玉まつりの万灯船も40年近く前からおじいちゃんが中心となって組み立てていたんです。そのおじいちゃんが90歳を超えたんで世代交代することになり、僕たちが手がけるようになりました。

-お二人は普段はどのようなお仕事を?

隆明さん(兄):僕は大工ですね。おじいちゃんのような船大工ではなく、家を作る方の大工をやっています。

宏道さん(弟):僕は会社に勤めています。

-お二人とも、船大工が本職ではないのですね?


宏道さん(弟):そうなんです。普段は全く別の仕事をやっているけど、この長瀞船玉まつりの日だけは、船大工になるんです。僕たちは、「1日だけの船大工」てなわけなんです。

隆明さん(兄):一年に一回のことなので、工程を忘れてしまい、「去年はどう組み立てたっけ?」なんて毎年仲間と相談しながら組み立てています(笑)。

-お二人とも、世代交代する前から万灯船の組み立てには携わっていたのですか?

隆明さん(兄):僕は20歳くらいから、弟は中学生くらいから携わっています。

-世代交代の前からずっと万灯船作りには関わっていたんですね。お二人ともそれぞれ仕事を持ちながら、この日は船大工になるわけですが、万灯船の組み立てに携わる魅力はなんでしょうか。

隆明さん(兄):やっぱり素晴らしい仕事だと思ってるからですね。長瀞船玉まつりは、万灯船がなければ締まらないですし、みんなが期待しているものを作り上げているって誇りがあります。

宏道さん(弟):それはありますよね、祭りに貢献しているってところに嬉しさがあります。僕たちが作ったもので喜んでもらえるっていうのは、本当にやりがいがあります!

隆明さん(兄):今、僕たちを中心に同年代の親戚や友人約10名で万灯船を組み立てているのですが、本当にみんなやりがいに満ちていますよ。

宏道さん(弟):みんなアツいんですよ。やりたいと思っても、なかなかできる仕事ではないので。

隆明さん(兄):あと、おじいちゃんが作り上げてきたものですからね、僕たちの代では終わらせないぞ!という想いもあります。

 

-当日はどのように準備をされているのですか?

宏道さん(弟):朝の3時半に起床、4時には資材置き場に集合して、12時頃までには二艘とも完成させます。その後、昼過ぎから提灯に火を灯したりしていく感じですね。祭りが始まってからは、順番に4人ずつ船の上に乗って、消えてしまった提灯に火を灯したり、燃えてしまった提灯を処理したりします。万灯船には400個くらい提灯が付いていて、一つあたり約2本のろうそくを使うので、結構大変な作業です(笑)

-船はその日のうちに片付けるのですか?

隆明さん(兄):そうですね。25時までには全てバラします。そして翌朝、といってもすぐなのですが、朝3時半ころから資材を運んだりして、朝の7時には片付けが完了する感じです。

宏道さん(弟):打ち上げとか、全くできないです…(笑)

―それでも、立派な万灯船2艘を当日に作って、翌朝には全て片付けられてしまうのは、兄弟ならでは連携があるからでしょうか?

宏道さん(弟):まあ、阿吽(あうん)の呼吸ですかね(笑)本当に仲良くやっているので、いいもの作ろうってみんなが楽しめることですね。

―ちなみに、喧嘩とかしないんですか(笑)

隆明さん(兄):ないですね!ちょっとした口論もないんですよ。せっかくの祭りなので、楽しもうってみんなが思っているんです。本当、いい雰囲気で組み立てができています。

綺麗に見せたい。細部にこだわった新型の万灯船

-万灯船を組み立てる上で、工夫しているところやこだわりを教えてください。

隆明さん(兄):毎年、組み立てを行うだけだったのですが、実は、2、3年前に一艘だけ万灯船が流されてしまい、壊れて使えなくなってしまったんです。それで僕たちが中心になって新しい万灯船を作ったばかりなんです。

-なるほど、新しく作るにあたって、何か工夫はされましたか?

隆明さん(兄):まずは組み立てやすくバラしやすいように、かつ、丈夫にしましたね。昔から万灯船の組み立てを見ていて、「ここをこうするともっと組み立てやすいし安全なのになぁ」というところがあったので。

宏道さん(弟):そうそう、こうした方が安全だし、って思うことはいっぱいありました。

隆明さん(兄):あとは、見栄えにもこだわりましたよ!ものすごく細かいところなんですが、使用する柱の「面取り」という柱の角の加工を行ったんです。「面取り」をするだけで見栄えはだいぶ変わるので。夜だとわかりにくいと思いますので、昼間にぜひ見ていただければ!

宏道さん(弟):万灯船を作り変えるのは、何十年に一度のことですからね。気合を入れて作りましたよ!どこから見ても綺麗に提灯が見えるようにしたのも、皆さんに喜んでもらうためのこだわりです。

隆明さん(兄):万灯船は動くので、四方のどこから見ても綺麗に見せるのがコツなんです。

二人の工夫が施された、幻想的な万灯船

 

国指定名勝「長瀞」の岩畳で見る最高のロケーションの祭り

-長瀞船玉まつりのオススメの楽しみ方を教えていただけますか?

宏道さん(弟):灯籠流し、万灯船、国指定名勝「長瀞」の岩畳、打ち上げ花火と仕掛け花火、この4つが揃っているところでしょう!こんなに魅力が被ったら最強じゃないですか(笑)

国指定名勝「長瀞」の岩畳で行われる長瀞船玉まつり

 

宏道さん(弟):灯籠流しは夕方くらいから行われるのですが、川面に灯籠が映し出され、幻想的な光景になります。万灯船は僕たちの作った見応えのある船ですからね。花火も毎年の見どころです。秩父鉄道さんの仕掛け花火はとてもユニークですし、最後の仕掛け花火「ナイアガラの滝」は圧巻ですよ!万灯船とのコラボがとても見応えありです。
そして、岩畳。長瀞の象徴ですが、国指定名勝でこれだけ豪華な祭りがみられるのは、他ではないんじゃないですかね?

隆明さん(兄):打ち上がる花火も間近で、真上で開く花火は衝撃波を受けるほど!見上げる角度が全然違いますからね。

 

花火(ナイアガラの滝)と万灯船

-確かに!ここまで見どころが凝縮されている祭りは珍しいかもしれません。最後に当日の意気込みを教えていただけますか?

隆明さん(兄):怪我なく、綺麗な万灯船を作る、安全第一で長年続けられるようにやっているので。自分たちも楽しみますが、来てくれた人たちに楽しんでもらえるようにやりたいと思います!

宏道さん(弟):兄に全部言われちゃいましたね(笑)。楽しんでもらえるよう、頑張ります!

-祭り当日が楽しみです。ありがとうございました!

お二人のインタビューは終始穏やかな空気でした。それはこの兄弟の仲の良さがつくった雰囲気だったと思います。阿吽の呼吸でスムーズに、且つ楽しく進められる万灯船の組み立て現場は、見ていて一緒に組み立てたくなってしまうような場所なんだと思います。
ぜひ会場で、二人の想いが込められた万灯船をご覧になってみてはいかがでしょうか?

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