寄居玉淀水天宮祭インタビュー

捨てきれぬ“祭りへの憧れ”。22歳からのチャレンジ

株式会社 教育総合研究所
代表取締役

岩垂 良征(いわだれ よしゆき)さん

寄居町といえば、水天宮祭をはじめ数多くの祭りがある地域。祭りに関わる人々にも様々なドラマがあります。一度は寄居を離れつつも22歳に帰郷。ほどなくして、子どもの頃より抱いていた祭りへの憧れから、地元の祭りに関わり始めた岩垂さんは現在、祭りを盛り上げる中心人物の一人。子どもたちの世代に祭りを伝えるための努力や取組を伺いました。

聞き手・文:浅見 裕

祭りへの憧れ。大人になってからのチャレンジ

浅見 岩垂さんは、いつ頃から「寄居玉淀水天宮祭」に関わっているのでしょうか?

岩垂さん 22歳の頃からですね。学生の時に寄居から離れていたのですが、帰郷してから祭りに関わるようになりましたね。

浅見 そうなんですか。大人になってから関わるようになったとは、少し意外です。

岩垂さん 地元には、子どもの頃から「お囃子(おはやし)」の演奏で祭りに関わる子どもが多かったんですよ。でも、私は「お囃子」ができなかったんです(笑)。だから、祭りはいつも外から“見ているだけ”でした。

浅見 祭りに参加する子どもたちを見て、憧れはありませんでしたか?

岩垂さん もちろんありましたよ!いつも「かっこいいなー」って思っていました。そんな想いを昔から持っていたので、大人になって寄居に戻ってきたときに、自分の知っている先輩や後輩が中心となって祭りの中心になっていたので、「自分も祭りに関わってもっと盛り上げたい!」と考え、祭りに関わり始めました。

浅見 そこからどのような関わり方をされたのでしょうか。

岩垂さん 町内の神事に参加したり、「お囃子」の練習をしたりしましたね。

浅見 大人になってから、「お囃子」の練習を、ですか?

岩垂さん はい、そうですね。必死に練習しました。「お囃子」ができるようになると、「寄居玉淀水天宮祭」に限らず、寄居の様々なお祭りや行事で演奏ができるようになりました。

浅見 それで、今では地元の祭りに欠かせない存在になられているわけですね。

岩垂さん いえいえ、そんなことはないですが…(笑)。5年前から町内の皆様と協力して、子どもたちにも「お囃子」の指導もするようになりました。

そもそも、「お囃子」の指導者不足が課題でもありましたし、各町ごとの独特な「お囃子」を若い世代に伝えるために、自分もその役割を担いたいと立候補したことがきっかけですね。

浅見 なるほど、そこから地元の子どもたちとのふれあいが始まったのですね。

 

子どもたちとのふれあいで感じる、成長の喜び

浅見 子どもたちとふれあう中で「やっててよかったな」と思うことはどんなことですか?

岩垂さん やはり、子どもの成長を目の前で見られることですね。子どもたちは、最初は太鼓代わりにタイヤを叩いて練習をするんですよ。本物の太鼓だと音が錯綜して練習にならないので…。だから、本物の太鼓をたたくことを目標に、最初は音の出ないタイヤで、じっと練習をするんです。

それで、タイヤから本物の太鼓を叩けるようになった子どもを見た瞬間、自分のことのように嬉しくなりますよ。

浅見 子どもたちの成長がハッキリと目に見えるというのは素晴らしいことですね。

岩垂さん 本当にそうです。全く叩けない状態から見ているわけですから「やっとここまできたな」って感動します(笑)。ちなみに、子どもの「お囃子」の覚え方も面白いんですよ。

浅見 といいますと?

岩垂さん 大人は楽器を演奏するとき、譜面で見て覚えるじゃないですか。でも、子どもたちはとにかく耳で覚える。音を聴くことで、どんどん感覚的に覚え、上達していくんですよ。

浅見 それはすごい!

岩垂さん だから、子どもたちには小さい頃から参加してもらうのがいいんですよ。早い子だと保育園・幼稚園の頃から参加しているかな?

浅見 そんなに小さい頃から「お囃子」をやるんですね。

岩垂さん そうですね。どんなに小さい子どもでも、とにかく「お囃子」を楽しそうに演奏しています。それを見るのがまた嬉しいんですよね!

浅見 子どもたちが楽しんで取りくめる場・機会を作れてるというのは何事にも代え難いことかもしれませんね。

岩垂さん そうですね。あとは、自分で積極的に祭りに関われている、という喜びもありますよ。実は祭りに関わっている者にしか見られない景色もあるんです。

浅見 おお!それはどんな景色ですか?

岩垂さん たとえば、水天宮祭の時に川面に浮かぶ舟山車からチラッと見える花火。普通の人では決して見ることができない、川の上からの花火は言葉にならないほどの美しさです。あれは、本当に特別な景色ですね。

※観客は川岸から花火を見るため、普通は舟山車からの花火はみられない

浅見 確かに…それは贅沢ですね!

岩垂さん 普通は見ることができない景色を堪能できるのも、祭りに関わり続けることの特権ですからね。苦労して「お囃子」を練習して、やっと見ることができる景色なんです。

自分は大人になってから、その景色を知りましたからね…子どもたちには、早くからその景色を見てほしいという想いもあったので、「お囃子」の指導にも熱が入りました(笑)。

魅力がギュッと凝縮された「寄居玉淀水天宮祭」

浅見 「寄居玉淀水天宮祭」の魅力や楽しみ方について、ポイントを教えていただけますでしょうか。

岩垂さん そうですね、祭りのメイン会場となる河原には、この祭りの全ての魅力がギュッと凝縮しています。それを体感するのがいちばんの楽しみ方ですね。

浅見 ギュッと凝縮した魅力、といいますと?

岩垂さん たとえば、花火は少し遠目でも見ることはできますが、ぜひ本会場の河原まで降りてきて見てほしいですね。川面に映る舟山車、岩場にこだまする地響きのような花火の音、子どもたちのこの日のために練習した「お囃子」、それらを一挙に感じられる空間がそこにはあるんです。

浅見 なるほど!確かにそれは凄そうですね!

岩垂さん 特に花火の音はすごいですよ。身体中に響き渡りますから(笑)。

とにかく、花火との距離が近いんです。城山から打ち上がる花火はすぐ目の前で花開きます。河原には火の粉が降ってくることもあるくらいですから(笑)

浅見 本当に、ギュッと凝縮された魅力の中心に身を投じる感じですね。そんな楽しみ方ができる祭りは珍しいですよね。

岩垂さん 本当にそうです。あとは、渡御1してきた神輿が河原に到着し、仮宮※2に到着するときも見どころですよ。神輿を担いで丁寧に各町を周り、会場に入ると観客も神輿に注目します。渡御のクライマックスですし、たくさんの方の注目を受けるわけですから、地元の担ぎ手は、この瞬間が最もテンションが上がります!あまりにも熱くなりすぎて、年によっては、神輿を担いだまま河原に入ってしまうこともあります(笑)。

浅見 そのまま川に!それはパワフルですね…

岩垂さん 担ぎ手の熱気も最高潮なので、観客の方にも気迫が伝わるんですよ。それが目の前で繰り広げられるわけですからね。見ものだと思います。

浅見 それは見ごたえがありそうです。

岩垂さん そして、花火大会が終わったあと、還御祭※3が行われるのですが、これもぜひ見てほしい。神輿を改めて担ぎ、大いに盛り上がった会場を後にするのですが、最後の力を振り絞って、神輿を担ぎ上げる姿には、1日の最後とは思えない迫力があります。実はこの時、ほとんどのお客さんは帰ってしまっているんですけどね。

浅見 観客がいなくても、そんな行事が行われるんですね。

岩垂さん はい、会場が静かになり始めた頃に行われますので、静けさの中から生まれる熱気は、ここまでの行事では見られない一面です。見どころの一つであることは間違いありませんね。

※還御祭は花火大会が終了したのち、21時15分過ぎから行われる
※道が狭いので、観覧時には注意が必要

浅見 みなさんが帰った後の見どころ、これは隠れた魅力ですね。

祭りを次の世代につなげたい

浅見 最後に、祭りに対する想いをお聞かせいただけますでしょうか。

岩垂さん そうですね、伝統ある祭りをなんとか子どもたちの世代に引き継いでいきたいですね。これまでは、私たちが上の世代から祭りを受け継ぎましたけど、それを子どもたちの世代に引き継ぐにはどうしたらいいか、大きな課題です。

浅見 具体的に、どのようなことを取り組んでいますか?

岩垂さん 2015年から、各町の垣根を超えた青年会を立ち上げました。

というのも、そもそも子どもの数自体も減ってきていますし、私たちの世代が手を取り合って協力していかないと、祭りの継続は難しくなっています。そのため、新しい取り組みも仕掛けて、祭りを盛り上げるようにしています。

例えば、秋祭りでは付け祭りとして、山車の巡行の他に、氏子9町以外の地域の皆様にも参加して頂いています。獅子舞(金尾白髪神社)や神楽(折原佐太彦神社)、大凧展示(男衾牟礼)、お囃子(鉢形内宿、小前田上町)、地元の幼稚園児によるパレードや山車曳きなど、そういった取り組みもしています。

浅見 なるほど、今ある課題に対して、新たな取組も積極的にされているんですね。

岩垂さん はい、核となる伝統はしっかりと守った上で、新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。

浅見 なるほど、本日はありがとうございました!

 

22歳を過ぎてから、愚直にお囃子を練習し、積極的に祭りに参加してきた岩垂さん。「寄居には素晴らしい祭りがたくさんある!」という信念があるからこそ、「祭りで地元をもっと盛り上げていきたい」という想いが祭りへの関わりをより一層強めていくのだと思いました。


《注釈》
1、渡御:神輿・山車などが出かけて行くこと
2、仮宮:祭りの期間中、神様が宿ったお神輿が止まる場所
3、還御祭:本宮まで神輿をお返しするための巡行