熊谷うちわ祭インタビュー

“町衆”が作った「うちわ祭」を続けていくために

熊谷八坂神社祭礼行事保存会 会長
熊谷うちわ祭協賛会 前会長

藤間 憲一(とうま けんいち)さん

毎年多くの人が訪れる「熊谷うちわ祭」。大切な伝統を守りつつ、大規模な祭りを動かすのは並大抵の舵取りではできません。そんな舵取りをし続けているのが、熊谷うちわ祭協賛会 前会長・熊谷八坂神社祭礼行事保存会 会長の藤間憲一さん。伝統を守らねば、という想いと共に、祭りを盛り上げる策を打ち出し、そして実行してきたその背景を伺いました。

聞き手・文:浅見 裕

町衆が作った「自分たちの祭り」

浅見 まず、「うちわ祭」の特徴を教えていただけますでしょうか?

藤間さん やはり、町衆が作った祭り、というところでしょうね。京都の祇園祭もそうですが、祭りが長く続く秘訣(ひけつ)の一つに、町衆が主体であることが上げられると思います。町衆が“自分たちの祭り”として関わることで、祭り全体が自然と盛り上がっていくものですよ。

浅見 町衆が作った祭り、とはどんな背景があるのでしょうか?

藤間さん そもそも「うちわ祭」は、江戸中期に各寺社がバラバラに行っていた祭りを統一したいと町衆が考え、役人に嘆願書を提出、それが聞き届けられ、町全体の祭りが行われるようになりました。これが町民の総意にもとづき、町衆の祭りとなった経緯です。

浅見 そうなんですね!そんな歴史があったとは…

藤間さん ちなみに、今でも御仮屋(おかりや)※注1の上に、草分け六人衆として嘆願書を聞き入れた役員の名前が祀(まつ)られていますよ。ぜひ、見てみてください。

浅見 それは見てみたいですね!そういった歴史を感じられるポイントはぜひ多くの方に知ってほしいですね。

祭りに必要なのは感動、そして“バカモノ”

浅見 そんな町衆が作った「うちわ祭」に藤間さんはどのように関わってこられたのでしょうか。

藤間さん 町衆が作った祭り、という背景もありますから、自分たちでこの祭りを「もっと盛り上げるんだ!」「永く続けていくんだ!」という思いで、新しい策も考えてきました。

浅見 伝統だけでなく、新しいことにも目を向けたのですね。ちなみに、具体的には、どのような新しい取り組みをしているのでしょうか?

藤間さん 例えば、これまでに、山車にGPSを取り付け、常に山車がどこにあるかインターネットで確認できるシステムを取り入れました。これによって、多くの人にホームページを見てもらえるようになりました。今後の施策として、電子地図の上にARを表示させる取り組みなんかも進めています。
「うちわ祭」の公式ページで山車の位置情報を発信している

浅見 そんな先進的なことを!びっくりしました…。そんな新しいことに取り組むのは何か狙いがあったかと思うのですが、どのようなことでしょう。

藤間さん そうですね、祭りを盛り上げる方法を色々な人に聞いていく中で、人は祭りに「感動」を覚えることで、祭りを好きになっていく、という意見があり、そこに着目しました。

浅見 なるほど。「感動」の体験が祭りへの想いを加速させる感じですね。

藤間さん そうですね。そこでさらに深掘りして意見を集めていってわかったことが、「感動」の場面は人によってバラバラであるということでした。

浅見 といいますと?

藤間さん 例えば、小学生のお子さんが汗を流しながらお囃子を叩く姿に感動する親御さんもいれば、厳かに行われる祭りの行事に感動する方もいます。そういった感動の場面を作ることで、より一層祭りを盛り上げられるのでは、と考えているわけです。

浅見 たしかに、感動のポイントは人それぞれですからね。ちなみにそういった感動の場面を作るのに重要なのは、どんなことですか?

藤間さん 大切なのは「人」ですね。そもそも、祭りを作り上げているのは「人」ですから。そして私は、祭りを盛り上げる「人」はバカモノ、ワカモノ、ヨソモノだと思っています。

浅見 「バカモノ」!また、大胆な言葉が出ましたね(笑)。

藤間さん いやいや、バカモノいっても“祭りバカ”のことですよ(笑)。特にこのバカモノが重要で、彼ら・彼女らが活躍できる受け皿を町内に作ることが重要と考えています。

浅見 受け皿、ですか。

藤間さん というのも、祭りにしっかりと関わるには、「うちわ祭」前後の1週間は休みを取る必要がありますが、その休みを理解してくれる勤務先は、そう多くはありません。それを解決するために、祭りの時期に休みを確保できる仕組みや職場の斡旋をハローワークで行うなどをして、祭りの継続や盛り上げにつなげたいと思っています。

浅見 なるほど。確かに祭りに関わる人の普段の生活も考える必要はありますもんね。

藤間さん そうなんです。祭りは3日間で終わりますが、祭りに関わる人は一年中何らかの形で祭りのことに携わっているのですから。常に、そういった人たちが活躍できる祭りの舞台ができたらいいなと思っています

「静」と「動」のコントラストが「うちわ祭」の醍醐味

浅見 最後に、祭り当日の見どころを教えていただけますか?

藤間さん 見どころはたくさんありますが、何といっても「静」と「動」のコントラストを感じてもらいたいですね。

浅見 「静」と「動」のコントラスト、とても素敵な響きですね。どんな場面でそれらを感じられるのでしょうか?

藤間さん 例えば最終日の22日、静:年番送り、動:曳っ合せ叩き合い(ひっかわせたたきあい)、ですね。

浅見 まさに終盤の見どころですね!

藤間さん そうですね。「年番送り」は祭りのクライマックス。厳かな空気の中執り行われます。一方で、激しくお囃子が鳴り響く「曳っ合せ叩き合い」も賑(にぎ)わせ祭りの役割としては、欠かせないものです。

藤間さん このバランスがいかに良いか、が良い祭りかどうかのポイントだと思います。その点を「うちわ祭」では体験できるかと思います。

浅見 わかりました、「うちわ祭」がとっても楽しみになってきました!本日はありがとうございました。

町衆の祭りである「うちわ祭」の本来の意味合いを大切にしながらも、新しい取り組みを行ってきた藤間さん。祭りの楽しみ方についても「静」と「動」のコントラストといった、繊細な表現をされることも印象的でした。祭りを盛り上げるための必要な取り組みと、祭りの神聖さの両方をしっかり理解しているからこそ、「うちわ祭」を盛り上げ、より良い祭りにしていくための舵取りができるのだと思いました。


《注釈》
1:祭りの期間中、お神輿が止まる場所。行宮(あんぐう)ともいう。