鉄砲まつりインタビュー

やり遂げた時の達成感が毎年の原動力に

鉄砲まつり 火縄銃の射手

石井 加奈子さん

秩父地方で1年を締めくくる祭りともいわれる小鹿野の「鉄砲まつり」。この祭りのメインとなる「お立ち神事」では、飯田八幡神社へ駆け上がる馬に合わせて、両側から火縄銃と猟銃が発せられ、その銃火が奉納されるという大変珍しいお祭りです。今回は、この火縄銃の奉納をつとめる唯一の女性射手である、石井加奈子さんに「鉄砲まつり」への思いについて聞きました。女性でただ一人、この祭りに参加し続ける理由とは?

聞き手・文:武田真那実

はじめは、"面白そう"という気持ちから参加

武田 石井さんは、いつから「鉄砲まつり」に関わっているんですか?

石井さん ちょうど7年~8年ぐらい前だったと思います。出産で1年だけお休みしましたが、それ以外は毎年「鉄砲まつり」の火縄銃奉納と演武※1に参加しています。過去ずっとやってきて、火縄銃を扱っている女性の参加者は、私だけですね。

武田 女性で火縄銃の射手というのはなかなか聞かないですね。なぜ火縄銃をやろうと思ったんですか?

石井さん 当時、私が働いていた牧場のオーナーの知り合いが、たまたま「鉄砲まつり」で火縄銃の会長をされていて、最初はちょっとしたきっかけで「やってみる?」って誘われたんです。私は小鹿野出身ではなく、「鉄砲まつり」自体も全く知らなかったんですけど、面白そうだったので「じゃあやってみようかな」って軽く返事しました。本当に最初はそういう軽い気持ちでした。

武田 まわりからの反対などはありませんでしたか?

石井さん もちろん最初は家族も心配していましたけれど、初めて参加した時に家族が見に来てくれて、「このお祭りがすごく良かった」と言ってくれて、それからずっと応援してくれています。見に来てくれるお客さんも、最初は「あれ、女の人がいる」っていう声が多かったのですが、毎年来てくださる方もいて、徐々に「頑張ってね」とか「かっこいいね」といってもらえるようになりました。

武田 はじめて火縄銃を扱った時はどうでしたか?

石井さん 重たい……って思いました。銃によって形も重さも全く違うんです。火縄のかけかた(火のついた縄の”ひばさみ”へのセットの仕方)一つとっても個性があるような気がして、ずっと同じ火縄銃を使っているのですが、銃のくせというか、特徴をつかむまでが大変でした。1年目は、あまりにも緊張してしまって、手が震えて引き金すらひけませんでした……。

お祭り当日の10発を大切に撃ちたい

武田 火縄銃を奉納したときに、成功したなと思う瞬間ってあるんですか?

石井さん 祭り当日は全部で10発を撃つんですけど、やはり10発が不発なく、ちゃんと撃てた時に「うまくできたな」って思いますね。特にメインである「お立ち神事」の5発がしっかり不発なくできなければと思って、一生懸命練習をして、1発、1発を大切にしながら撃っています。

武田 不発になることもあるんですね!? どうやって調整しているんですか?

石井さん 火縄銃は縄に火をつけて、火薬を着火させ撃つものなのですが、おそらく引き金を引いた際に、縄と火薬をうまく接触させられずに不発になってしまうのかなと思います。もちろん、銃を発火させるための口薬(こうやく)の量や、つけ具合などによっても変わるとは思うんですけど、いまだに上手くいかない時もありますね。当日はあまりしゃべったりできないですが、不発が続くとみなさんに「どうした?」って心配されることもありますよ(笑)。

武田 危険を伴うものでもあると思うのですが、それでも続けている理由は何ですか?

石井さん そうですね。やっぱり、常に心のどこかで「鉄砲まつり」のことを考えている自分がいます。「もう今年で終わりでいいや」って思うこともたくさんありますし、毎回すごく緊張しています。でも、みんなで無事に銃火を奉納した時の安堵感とやり遂げたという達成感が、何ものにも変えられなくて。この気持ちが続くかぎり、ずっとやっていこうって思っています。

火縄銃と猟銃を参道から撃ちあう「お立ち神事」が見どころ

武田 お祭りの当日はどんなことをされるんですか?

石井さん 12月10日の16時ごろから行う「お立ち神事(おたちのしんじ)」と、その前に行う演武と合わせて10発火縄銃を撃ちます。メインは「お立ち神事」で、飯田八幡神社の参道を馬が駆け上がる時に2発、行列の行進時に3発ほど参道の両側から火縄銃と猟友会の銃で撃って奉納を行います。

武田 鉄砲隊は、総勢何人ぐらいいるんですか?

石井さん 私は神社に向かって右側の火縄銃の列に参加しているのですが、火縄銃だけでも20名ぐらいはいると思います。

武田 そんなに多いんですね! 火縄銃の演武ではどんなことをするんですか?

石井さん 演武は本番前の練習という意味合いもあって、神社参道の周りにある田んぼの一角で、銃を5発ほど撃ちます。
「お立ち神事」ではギザギザになりながら並ぶのですが、演武の時は三角形の隊列になって撃つんですよ。

武田 石井さんの決まった位置などはあるんですか?

石井さん いつも2番目に並んでいます。その位置の方が、銃を構えている時間が短くて済むんです。隊列の前から順に発射していくので、後ろのほうにいると構える時間が長く負担になってしまいますから。火縄をひばさみにセットしたら、なるべく早く発射させたいんです。

武田 そうなんですね!では、最後に「鉄砲まつり」の魅力をひとことでいうと?

石井さん 地域密着型のお祭りではあるので地元の方も多いですが、私のように他から来る人も温かく迎えてくれる、とっても和やかなお祭りだと思います。

武田 いつかは娘さんと一緒に親子共演も?

石井さん 本人がやりたいって言ったら、やらせたいと思います。「鉄砲まつり」は、2回見せてはいるんですけど、最初見せたときはまだ小さくて、去年初めてお祭りを理解したようで。「ママ、鉄砲撃ったよねえ! すごいね」って言ってましたね。馬も大好きで、お祭り当日の馬は私が勤めていたこの牧場から出すんですけれど、牧場に行くよって娘に言ったら「今日ね、お馬さんに乗るんだ」って一人で張り切って来ましたし。

武田 親子共演の可能性ありそうですね。本日はありがとうございました。

火縄銃と猟銃の銃火奉納がある大変珍しい小鹿野の「鉄砲まつり」。正直、私も取材する前まではこの祭りをよく知りませんでした。しかしインタビューを通じて、本物の火縄銃を扱うという危険はあるものの、それ以上にやり遂げた達成感が翌年の原動力になり、毎年欠かせない祭事として、関わっている方を魅了しているということが、よくわかりました。なお、「鉄砲まつり」では、銃火奉納以外にも小鹿野名物の歌舞伎や神楽の上演、大名行列なども行われます。今年は「鉄砲まつり」を訪れて、1年の祭りの見納めをしてみてはいかがでしょうか。

《注釈》
1、火縄銃奉納(銃火奉納):12月10日の16:00~「お立ち神事」内で火縄銃と猟銃の空砲を撃つこと。
火縄銃演武:同日14:30~神社参道近くの田んぼ前で火縄銃を撃つ行事。

2、火縄銃の掛け方