こうのす花火大会インタビュー

「誰にも真似できないことをやる」という思いが、世界一の四尺玉を打ち上げる

こうのす花火大会 実行委員長
島村工務店 代表取締役社長

島村伸之さん

「こうのす花火大会」を運営しているのは、地域の若い経営者らで構成される商工会青年部。会場設営から協賛募集、出店業者の手配など、その運営の全てを青年部が担い、手作りで花火大会を開催しています。今回は、青年部のメンバーを束ねる、島村さんに華やかな花火大会の裏にある努力や想いを聞きました。

聞き手・文:小林拓水

突然、実行委員会のメンバーに

小林 島村さんはいつから「こうのす花火大会」に関わるようになったんですか。

島村さん 4年前からですね。子どもが通っている幼稚園の保護者会に、以前から花火大会に関わっていた青年部の先輩がいたんです。その人が、一枚の紙を持ってきて「ここに名前書いて」と。言われるがままに書いたら、それがこうのす花火大会を主催する青年部の登録用紙だったんです(笑)。

小林 ずいぶんと急だったんですね(笑)。そこから実際に運営に関わるようになってみていかがでした?

島村さん それが、実際やってみたら楽しかったんですよ。元々商工会は、経営者の集まりで、自分の判断で物事を動かしていくことに、おもしろさを感じる人間ばかりなんです。

「こうのす花火大会」は、協賛金を募るところから、地権者さんへの交渉、花火師さんや屋台の手配、会場設営まで全部自分たちの手でつくりあげていくんです。しかも、それぞれの役割の中で、「これがベストだ」と思ったら、自分の責任で物事を動かしていく運営スタイル。それが面白くて、どんどんハマっていきましたね。


小林 現在は、実行委員長ということですが、いざメンバーをまとめる立場になってみていかがですか?

島村さん みんな自由人なので、なかなかきれいにはまとまりません(笑)。ただ、いい意味で見栄やプライドが強い人ばかり。「やるからには、恥ずかしいアウトプットは絶対しない」って思っているから、誰も手を抜きません。やると決まれば、ゴールに向かって一直線ですよ。

小林 頼もしいですね。

島村さん そうですね。実行委員長としては、その強い想いを活かすのが大切だと思っています。だから、全部が全部、計画通りに動かなくてもいいかなと。多少良し悪しがあってもメンバーに任せて、それぞれの力を思う存分発揮してもらえればそれが一番。

小林 懐が広い……。

島村さん だから自分の役目は、ぶれることのない“柱”を決めること。あとは自由と責任を与えて各々に動いてもらった方が良い花火大会になるはずなんです。

小林 その“柱”というのはどういったものでしょう?

島村さん まずお客さんを満足させることですね。「こうのす花火大会」の目玉でもある四尺玉の打ち上げ。もう一つは経済の発展ですね。

誰も真似できないことをやる

小林 この大会の目玉である四尺玉を打ち上げるのは、やはり相当な苦労があると思うのですが……。

島村さん そうですね。特に私が実行委員長に就任する前年は打ち上げに失敗してしまったんです。四尺玉を発射する筒も壊れてしまったので、翌年は高い費用を払って筒を作り直さないといけないというマイナスからの波乱のスタートでした。

小林 マイナスですか!?

島村さん 青年部の中でも拡大派と縮小派の意見がありましたが、私は四尺玉を再び打ち上げることを条件に実行委員長を引き受けました。やめると予算は浮きますが、お客さんは減ってしまいます。どっちにしたって花火大会を行うこと自体大変じゃないですか。だったらお客さんを惹きつける花火大会にして、達成感がある道を選ぼうと。

小林 腹をくくったわけですね。

島村さん もともと青年部の文化なんですよね。結成当初から「どうせ大変なことをするのなら『やってよかった』と思えないと意味がない。誰も真似できないことをやって、青年部に入って良かったと思える事業をしよう」と合い言葉のように青年部で話していたんです。その事業というのが、たまたま花火大会で世界最大の四尺玉を打ち上げることだったんです。

小林 それだけの想いでつくる花火大会は、やりがいも大きそうですね。

島村さん 本当にそうですね。一度、花火大会が終わって、夜中片付けをしているときに気付いたらその場で力尽きて朝まで寝ていたことがありました(笑)。

小林 なんと!(笑)。本当に力尽きるという感じですね。

島村さん そうですね。でも、帰り際にお客さんから「ありがとね」「また来るよ」って声をかけてもらえると全部報われるんですよ。あとは、花火が打ち上がったとき、その場にいるみんなが同時に空を見上げるんです。その光景を見ると、なんとも言えない喜びが湧き上がりますね。

地域の人と一緒につくる花火大会にしたい

小林 これだけの大きな花火大会だと地域の方の理解や協力も大切ですよね。

島村さん 地域の方に嫌われる花火大会では意味が無いですから、地元の人に愛されるものになるよう心掛けています。大会前には一軒一軒、地権者さんにあいさつにも回ります。

小林 地域の家を一軒一軒回るとなると時間も労力もかかり大変ですね。

島村さん 実は当初、「家の近くに人が殺到するから花火大会はやめてくれ」と地域に住む方が花火大会中止の署名活動を行いました。何かいい方法がないかと、何度もその方のもとに通って話し合った結果、一緒に周辺の通行ルールをつくることにしたんです。

そうしたら、「自分も祭りをつくっているんだ」と意識が変わり、気付けば毎年ゴミ拾いを率先して手伝ってくれるようになったんです。今では「せっかく自分の街の花火大会を見に来てくれる人がいるのに、会場が汚いと格好悪いだろ」なんて言ってくれて、本当に嬉しいですよ。

小林 地域の方にとっても、自分たちがつくる花火大会になっているんですね。

島村さん 他の地域の人と話していて「鴻巣って何があるの?」って聞かれたときに鴻巣の人はあまり答えられないんですよね。免許センターがあるくらい(笑)。だから、「自分たちの街の誇りになるものをつくりたい」という想いはずっとあったはずなんです。

小林 その「誇り」が、ギネスにも認定された世界一の四尺玉の打ち上げにつながったんですね。

島村さん そうです。世界一の四尺玉が打ち上がる花火大会に自分が携わることで、一層この花火大会や街にポジティブな想いも芽生えると思うんです。だからゴミ拾いや会場設営には、地域のボランティアの方にたくさん関わってもらっています。「この街に住んでる人みんなでつくっている花火大会なんだよ」ってみんなに思ってもらえたら嬉しいですね。

田んぼでDJ、夜空に咲く秋桜畑……毎年新たな見どころが生まれる

小林 「こうのす花火大会」の見どころを教えてください。

島村さん 花火はもちろんなんですが、実は屋台やステージイベントも面白いんですよ。屋台は、県外の面白そうな出店業者さんにも直接オファーをして200以上の露店が軒を連ねたり、ステージイベントはプロの歌手や地元の小学生チアリーダーチームが登場したりとか。あとは田んぼの中にDJブースもつくります。田んぼでパーティなんて、めったにできないですからね(笑)。

小林 おもしろそう!いろんな人が楽しめる場所になっていて素敵ですね。

島村さん そうですね。子どもから大人、そして鴻巣市民だけでなく、ここを訪れる全員に楽しんでもらえる花火大会でありたいと思っているんです。できれば海外の人にもこの花火を見せたい。東京から1時間ほどで来られる場所にある、最高峰の花火技術と日本の祭りの風情を楽しめる花火大会……海外の人にとっても、これは魅力的だと思うんです。鴻巣の花火が世界にも通用することを示せたらいいですね。

小林 世界に鴻巣の名が広まることを考えたらワクワクしますね。2017年の大会では何かこだわっていることはありますか?

島村さん 例年「こうのす花火大会」のメインはクライマックスの「鳳凰乱舞(おおとりらんぶ)※1なんですけど、実は今年さらに「秋桜繚乱(こすもすりょうらん)」という新たなプログラムを用意しました。

小林 それはどういった花火なんでしょうか。

島村さん ほんの一瞬なんですけど、大きなピンク色の花火を一斉に打ち上げて、夜空一面を秋桜畑のようにしようと思っています。2、3秒しかないので、カメラマン泣かせですね。「来年は撮ってやろう」とまた来てくれると思います(笑)。

小林 年々、期待値が高まる中、今までを超えないといけないというプレッシャーはありませんか……。

島村さん プレッシャーは全然感じないですね。「楽しく取り組むこと」が青年部のモットーなので。それに、その瞬間ではしんどいとか、大変だと思うことはあっても、とにかく一生懸命やり続けていれば、必ず多くの喜ぶ顔を見ることができるゴールに辿り着くんです。だから、プレッシャーを感じている暇があったら目の前のことを一生懸命やるのみです。

小林 なるほど。強い想いを持った青年部のみなさんがつくる花火大会が、ますます楽しみになってきました。

島村さん はい!本番当日まで、青年部一同全力で皆さんを楽しませる準備をしているので、ぜひ楽しみに来てください!

小林 本日はありがとうございました!

 

地域への、「自分たちの街に誇れるものを」という想い……華やかな花火大会の裏側にはアツいストーリーがありました。多くの人の想いが詰まった「こうのす花火大会」、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

《注釈》

1、:鳳凰乱舞(おおとりらんぶ)=こうのす花火大会のラストを飾る尺玉300連発のスターマイン。