川越まつりインタビュー

お囃子ってジャズに似てる!?次世代の担い手がお囃子にかける想いとは?

堤崎流幸町囃子会

若手のみなさん

370年もの歴史がある川越まつり。お囃子もその歴史とともに代々受け継がれてきました。今回は、幼少の頃から「堤崎流幸町囃子会」のメンバーとして川越まつりを盛り上げてきた、次世代の担い手4名にお話を伺いました。(写真左から水村賢太さん 隈倉麦さん 隈倉慎介さん 関口大介さん)

聞き手・文:岡澤修平

物心ついたときから、自然とお祭りに惹かれていた

岡澤 川越まつりに関わるようになったきっかけを教えてください。

関口さん 私自身はあまり覚えてないのですが、父親の影響からか、2歳のときにはもう玩具の太鼓を叩いていたみたいです。(関口さんのお父さんは幸町囃子会会長)

岡澤 他の皆さんも小さい頃から、まつりに参加していたのですか。

隈倉慎介さん そうですね。とはいえ、小さい頃は下から山車を見上げているだけでした。でも、参加している人がみんな楽しそうで、熱気も本当にすごくて。そのとき、「いつかは山車に乗りたいな」と思った記憶はあります。

隈倉麦さん 私たちは全員、生まれてからこれまで川越まつりに関わっていない年がない、と言ってもいいくらいですね。

岡澤 「川越まつりに関わり続けてきた」その理由はどんなものですか?

水村さん 一番は「山車に乗りたい」という想いです。僕にとって川越まつりの醍醐味といえば、山車に乗ってお囃子を披露するところ。そこになんとか関わりたくて、お囃子の練習をずっと続けてきました。たとえ山車に乗れなくても、山車を曳行する立場として楽しむことだってできます。祭りそのものが好きです。声を出して山車を引っ張って、というだけでも、すごく気分が高揚するんです。

隈倉麦さん 私も同じような理由です。ただ、小さい頃は「とにかく山車に乗りたい!」と思っていたのが、大人になってからは「祭りが盛り上がる場面で山車に乗りたい!」という思いに変わってきました。お囃子が上手くなるにつれて、曳っかわせ(ひっかわせ)などの盛り上がる場面を任せてもらえることが増えてきました。

隈倉慎介さん 「少しでもいい場面で」という想いは、みんなあったよね。

関口さん ありましたね。先輩方に認めてもらえないと任せてもらえないので、ひたすら練習あるのみでした。

 

「見ている」のと「する」ではテンションに違いが…

岡澤 川越まつりにはさまざまな魅力があると思いますが、どんなところが好きですか?

関口さん 大人になってから感じたことですが、いろいろな人と関われるところですね。

岡澤 どんな人と関わることができるのでしょうか?

関口さん たとえば、普段あまり顔を合わせる機会のない近所の人ですね。いっしょに参加する人もいれば、応援してくれる人もいて。そういう人たちと関われるのが嬉しいです。

隈倉慎介さん 僕は祭りの非日常なところが好きですね(笑)。川越は生まれ育った町で、周りも知っている人ばかり。そんな人たちと祭りを作り上げていくというのは特別な思いがあります。僕は一時期、別の地域に住んでいたのですが、そこでは祭りは見ているだけ。やっぱり「見ている側」と「する側」とでは、テンションがまったく変わってきますね。

やっぱり曳っかわせは特別な時間

岡澤 子どもの頃から続けてきて、きっとたくさんの思い出があると思います。その中で特に印象に残っているエピソードはありますか?

関口さん 大きな交差点で、山車8台で曳っかわせをやったときですかね。

岡澤 曳っかわせは、川越まつり最大の見どころと言われていますよね。山車同士が出会うと、お互いの囃子台を向かい合わせて、お囃子と踊りを競い合うんですよね?

関口さん そうです。熱気がものすごい!自分たちの声も、お囃子の音も聞こえなくなるくらい、町方の歓声やお囃子が鳴り響くんです。見どころというのにふさわしい場面です。

隈倉麦さん 町方の歓声や提灯の乱舞、それぞれのお囃子もボルテージを増していくので、とにかく躍動感と熱狂は他では味わえないですね。

水村さん 僕ははじめて山車に乗ったときのことをすごく覚えています。そのとき組ませていただいたのはすごい先輩で、ついていくのに必死でした。無我夢中で太鼓を叩いていましたね。

岡澤 初めて山車に乗ったときのことは、やっぱり印象に残っているんですか?

関口さん 僕は小学校高学年のときにはじめて山車に乗って、ひょっとこの格好をして踊りましたね。今でもとても興奮しましたことを覚えています。

岡澤 小さな頃から続けてきた中で、何か大切にされていることはありますか?

関口さん 場面場面で組むメンバーが変わる中、最高のお囃子を披露することですね。

隈倉慎介さん 同じお囃子でも、組むメンバーそれぞれに個性が出るので、面白いですよね。

隈倉麦さん 人によって音に個性が出るという意味では、お囃子とジャズは似ているかもしれません。

岡澤 お囃子とジャズが似ているなんて、考えてもみませんでした!やはりメンバーが変わると、表現が難しく感じることもあるのではないしょうか?

隈倉麦さん そういうこともありますが、みんなの個性がうまく調和して、いい場面でいいお囃子ができたときは、一体感が生まれてとても嬉しいです。

岡澤 そうやって、みなさんのつながりがまた深まっていくのですね。水村さんは、大切にされていることはありますか?

水村さん 僕は別の町のお囃子を観察するようにしています。そこでいいと感じたところは、すぐに自分でも試してみますね。

岡澤 練習だけではなく、本番も学びの場ということですね。

隈倉慎介さん 本番でしか学べないことは多くあると思います。練習だけでは上達しませんしね。

水村さん 必死にやるからこそ上達するというか。そうした実感はありますね。

関口さん 特に、曳っかわせを経験するとしないとでは、全然違いますね。それに、一緒にやる人の表現力も、練習と本番ではまったく変わります。先輩方は練習でも上手いのですが、本番だとさらに表現に磨きがかかっていて、「本当にすごい!」と感じることばかり。現場でしか出ない力があるということを実感しますね。

隈倉麦さん 私は笛を担当しているので、山車の真ん中にいるのですが、本番では周りからの「圧」をものすごく感じます。みんなどんどん盛り上がっていて、熱気を発していて、絶対に練習では出ない表現が出てきます。

岡澤 本番の空気の中でみんな成長したり、新しい表現が生まれたりするんですね。

隈倉麦さん あとは、やっぱりお祭りそのものが楽しいから、気分が高まって、表現もどんどん良くなっていくんだと思います。

隈倉慎介さん 「ゾーンに入る」(時間の感覚を忘れるほどの集中状態)感覚に近いかもしれません。リラックスはしているけど、ものすごく集中しているというか。

関口さん そうそう!ゾーンに入ることができた年は、後から振り返っても、すごくいい年だったと感じますね。

岡澤 みなさんにとって、曳っかわせが特別な時間だということが感じられます。

隈倉麦さん 特別な時間といえば、曳っかわせが終わって、幸町に帰ってくる瞬間もそうです。町のみんなが山車の帰りを待っていて、出迎えてくれるんです。そんな光景を見ると「今年もやりきったな」と感じます。本当に幸せな気持ちになりますね。

水村さん 一仕事して帰ってきたぞ!という感じです(笑)。

 

幸町の2台の山車は必見!

岡澤 当日、特に見てほしいところはありますか?

水村さん 神幸祭(じんこうさい)※1に注目して欲しいですね。神幸祭は神様の乗った神輿や神馬などの行列とそれに従う山車行列が見所です。僕たちの幸町は10数年ぶりに2台の山車で神幸祭に従います。そこに私たち4名も乗り込むことになっています。

岡澤 みなさんの雄姿、ぜひ見てみたいです!

関口さん ありがとうございます!あとはそれぞれの山車や飾られている人形も、見てほしいですね。

隈倉慎介さん 山車は伸縮できる「迫りあげ式」という構造になっていて、その最上部に人形が飾られています。電線があるところだと山車を縮めて人形を格納せざるを得ないのですが、ここ幸町の辺りだと空が広い※2ので、山車から人形が迫り上がる様子を見ることができるんですよ。

水村さん 昼と夜の差も、ぜひ感じて欲しいですね。夜になると人々の持つ提灯や山車の提灯に明かりが灯るので、また違った雰囲気が楽しめますよ。

隈倉麦さん あと、山車は一つひとつ個性があるので、町ごとの違いを見比べて楽しんでもらいたいですね。

関口さん 今年は21台もの山車が登場する予定なので、本当に色とりどりの山車や各流派のお囃子、町ごとのお揃いの着物を見ることができると思います。

岡澤 21台もの山車が町を行き交う姿は圧巻ですね!

水村さん もちろん山車以外にも見どころはたくさんあります。お囃子が好きな人も、写真を撮るのが好きな人も、それぞれが楽しく過ごせるのが川越まつりなんです。

隈倉慎介さん あとは踊りが上手い人同士が乗った山車が巡り会うと、即興で踊りの掛け合いになることがあります。もし見ることができたら面白いと思いますよ。

岡澤 どんなことが起こるか予測できないのも魅力なんですね!最後になりますが、当日に向けた意気込みを教えてください。

隈倉麦さん 笛は舞によって曲を変えたり、お囃子をリードするので皆が一体感を持って盛り上がるようがんばります。

関口さん 全力で楽しみたいと思っています。ですので他のみなさんにも、ぜひ思い思いに楽しんでもらいたいですね。

隈倉慎介さん 祭り全体の話ですと、今年もみんなが楽しく、過ごせたらいいなと思っています。そのためにも安全には十分気をつけたいですね。

水村さん 先ほどもお話しましたが、今年は久しぶりに2台の山車が出ます。なので、思いっきり盛り上げていきたいと思います!

 

年齢も性別も越えて、受け継がれていくお祭り。

今回取材に同席されていた、堤崎流幸町囃子会の関口会長(写真左)と、お囃子の師匠である新井さん(写真右)にも一言ずつコメントをいただくことができました。

岡澤 若い世代のみなさんを見て、感じることはありますか?

新井さん 私たちが先輩方から教えていただいたお囃子を、今の若い世代が受け継いでいってくれている。とても嬉しいことだと感じています。

関口会長 年齢も性別も関係なく、みんなが仲良くなることのできるお祭りだから、彼らも小さな頃から続けることができたのだと思います。次の世代も出てきているので、負けないように、当日は思いっきり楽しんでほしいですね。

岡澤 みなさんのご活躍、とても楽しみにしています!本日は、ありがとうございました!

 

町にゆかりのある人なら、誰でも楽しむことができるという川越まつり。だからこそ、時代を越えて愛されてきたのだと感じました。川越まつりの名物「曳っかわせ」と「山車」に注目して、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

※1 神幸祭:氷川神社の神様が神輿に乗られ、川越の町を巡行する伝統儀式。人々はその御利益をいただく事ができると言われている

※2 幸町は、川越の一番街にあたる町。電線が地中化されており、空が広く見える。