土師祭インタビュー

地元の人たちとの絆が生んだ、自分(オタク)たちの“居場所”を守り続けたい

らき☆すた神輿準備会 代表 

大木 敏久さん (ハンドルネーム:Sugar.)さん

久喜市鷲宮で開催される「土師祭」。関東最大級の「千貫神輿」が有名ですが、10年前に放送された、アニメ「らき☆すた」の神輿が登場することでも注目されています。「らき☆すた神輿」は全国から担ぎ手が集まり、「らき☆すた」ファンだけにとどまらず、多くのアニメファンが集まる一大イベントとなっています。そんな「らき☆すた神輿」が10年もの間、続いてきたのは、それを作り上げたファンと地元の人の絆がありました。

聞き手・文:浅見 裕

地元の人たちに受け入れてもらい、自分たちの“居場所”ができた

浅見 大木さんは「らき☆すた神輿」にいつ頃から関わるようになったのですか?

大木さん 6、7年前からです。最初は「らき☆すた神輿」を担ぐことで参加をしていたのですが、4年前に「らき☆すた神輿準備会」が発足してからは、神輿の製作にも関わるようになり、今年はリーダーを務めることになりました。

浅見 「らき☆すた神輿」が始まった頃はまだ準備会がなかったんですね。なぜ準備会を発足したのですか?

大木さん 目的の一つに、とにかく「らき☆すた神輿」を継続させたい、ということがありました。

浅見 といいますと?

大木さん 「らき☆すた神輿」はもともと祭輿會(まつりみこしかい)※1と鷲宮商工会さんの協力により作られたんですよ。聖地巡礼で鷲宮が盛り上がった流れで、土師祭にも「らき☆すた」を取り入れようと、神輿を作ったんです。

浅見 初めからファンの方が中心となっていたわけではないのですね。

大木さん もちろん、「らき☆すた」の絵はファンで描きましたが、「らき☆すた神輿」を発案し、組み立てて作ったのは祭輿會の方です。

その後、年を重ねるごとに「らき☆すた神輿」が盛り上がっていき、関わる人も増えていく中で、祭輿會の方の負担が大きくなってしまっていたんですね。

なので、「らき☆すた」ファンが中心になって、「らき☆すた神輿」を継続させるための取り組みが必要だと思い、ファンの間で準備会を発足させたんです。現在では40名ほどが準備会に参加しています。

浅見 準備となると、ファンの人たちもかなり苦労をしているのではないですか?

大木さん そうですね。泊りがけで神輿の準備に来たりしますが、メンバーはみんなボランティアで参加していますよ(笑)。

ファンたちによって描き上げられた「らき☆すた」の絵

浅見 それほどまで、「らき☆すた神輿」を続けていきたい、と思うのはどんなところからでしょう?

大木さん 何よりも、僕たちが「らき☆すた」が大好きなことと、僕たちの“居場所”を守りたいということですね。

浅見 「居場所」ですか…

大木さん そうですね。鷲宮は「らき☆すた」の聖地として有名になりましたが、これは地元の方が「らき☆すた」ファンを受け入れてくれたことが大きいと思うんです。

浅見 というと?

大木さん 「らき☆すた」は聖地巡礼の走りと言われていますが、アニメが始まった10年前というと、世間的にはアニメ文化がそれほど受け入れられていない時代でした。

でも、鷲宮の人たちは、そんな「らき☆すた」ファンに対して、否定的な態度をとったことは一度もありませんでした。いつ鷲宮を訪れても温かく受け入れてくれるのが本当に嬉しかったんですよね。

浅見 地元の方との絆が生まれているんですね。

大木さん そうですね。ちなみに、「らき☆すた」ファンの間では、「帰郷」というと鷲宮に行くことを指すんです。それくらい鷲宮に対して愛着を持っています(笑)。

浅見 それは面白いですね!まさにファンの人たちにとっては、鷲宮が自分たちの“居場所”になっているのですね。ちなみに、「らき☆すた神輿」を通して祭りに関わって「よかったな」と思うことはありますか?

大木さん 普段の生活では関われない人と、一緒に祭りに参加できることですね。私たちオタクは、「祭り」などの表舞台には参加しづらく、インドアっぽいところがありますからね(笑)。なかなか、祭りをやっている人たちと関わる機会なんてなかったんです。

実際に祭りに関わっている人と話をしてみると、とても息が合い、楽しく交流できました。前の年では「千貫神輿」を担いでいたけど、翌年に「らき☆すた神輿」を担いでくれた方もいらっしゃいます。そうやって、お互いを理解し合うのがとても楽しいですね。

浅見 地元の人に受け入れてもらい、鷲宮が自分たちのホームグラウンドになっていることの表れですね。

大木さん そうですね。あと、「らき☆すた神輿」を担いでいるときは「自分たちが主役」と思えるのも、祭りに関わることの醍醐味ですね。

浅見 確かに、神輿を担ぐ人たちは間違いなく祭りの中心ですよね。

大木さん 僕たちオタクはどちらかというと、マイノリティなので、「主役」として活躍できる場面は少なかったりします(笑)。土師祭は「らき☆すた神輿」を担ぐことで主役となり、「自分たちが主役になってもいいんだ!」と気持ちが高まるんです!(笑)。

ファンの人たちに「おっ」と思わせる神輿を作りたい

浅見 今年で10周年を迎える「らき☆すた神輿」ですが、神輿に対するこだわりを教えていただけますか?

大木さん 見る人に“楽しんでもらえる”工夫をしています。

浅見 と言いますと?

大木さん 「千貫神輿」のように歴史深いものではなく、新しくできた神輿であるため、自由に進化させることができます。そのため、絵を変え、形を変え、祭りを訪れてもらうたびに変化を楽しんでもらえるようにしています。

浅見 進化し続ける神輿、とても面白いです!

大木さん あとは、絵の描き方もかなり工夫しています。万灯※2に使う布の幕に絵を描くとき、色がにじんで他の部分にまで広がらないように、線画に沿って溶かしたロウを染み込ませています。また、ロウを塗ると、内側の明かりをよく通すので神輿が輝いて見えます。

この技法はもともと、青森「ねぶた」を作るときに使われている技術なんです。

ただ、アニメの絵は描く線がとても細かいため、この作業がかなり大変…でも、その細かい所の手を抜かないことで、見栄えも全く変わります。

浅見 伝統的な技法と皆さんの熱意に支えられているんですね。

大木さん 頑張って仕上げた神輿は、昼と夜で見え方が全く変わります。ぜひ、違いも楽しんでいただきたいですね!

「らき☆すた神輿」特有の、ユニークな掛け声を楽しんでほしい

浅見 それでは最後に、祭り本番の注目ポイントを教えていただけますか?

大木さん そうですね。「らき☆すた神輿」を担ぐ時には、他の祭りには無い、独特な掛け声を発声します。そこに注目して見てほしいですね。

浅見 独特な掛け声!なかなか興味深いですね…それはどのようなものですか?

大木さん 普通は「わっしょい!」とか「そいや!」などが多いと思うんですが、「らき☆すた神輿」では「らき☆すた」に登場するキャラクターの名前を掛け声にするんです。

浅見 キャラクターの名前ですか?

大木さん 神輿の音頭取りとして「オタ頭」という役割の人がいるのですが、その人の合図に合わせて、声をあげていきます。ここで面白いのが「オタ頭」のキャラクターの好みによって、掛け声に登場するキャラクターが変わったりするんです。そんな違いを楽しむのも面白いと思いますよ。

浅見 なるほど、それは注目ですね!

大木さん あとは、僕たち「オタク」が立派に頑張っているところにも注目してほしいですね(笑)。どちらかというと、あまり表舞台には立たない人が多いですが、この日ばかりは思いっきり活躍しているところを見られますよ(笑)。

浅見 わかりました!ありがとうございました!

 

鷲宮には「らき☆すた」を通して、地元の人とアニメファンの交流が生まれています。その交流は決して一過性のものではなく、アニメファンが“居場所”と感じるほどにまで、絆が生まれているのだと感じました。

自分たちの“居場所”を地元の人とともに守りたい、その思いがより一層盛り上がる土師祭を支えているのでしょう。


《注釈》

※1、祭輿會:土師祭を運営している団体
※2、万灯:木の枠に紙をはり、火を灯すもの、「あんどん」とも言う。「らき☆すた神輿」は神輿そのものが大きな万灯となっている「万灯神輿」。